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傑作を集めて編集しているだけに、これでもかというほど、良質の作品が押し寄せてくる。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2013.12 ]

2003年12月発行
高教組教育資料センター 編
波照間永吉 監修
沖縄時事出版 刊
B5判/176ページ
1,429円(税抜)
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新編沖縄の文学(増補・改訂版)

高教組教育資料センター 編
波照間永吉(沖縄県立芸大教授) 監修

私が初めて組踊と出会ったのが、高校2年生の秋。高校の先生方で組織する「沖縄高等学校教職員組合組踊部会」の演ずる『執心鐘入』であった。

本書は、その組踊部会の先生方も参加して編集した本で、高校の国語の時間のテキストとして編集された書である。

内容は、
『身近な方言』 『歌謡―祈りの文学・オモロ・奄美の歌謡・宮古の歌謡・八重山の歌謡―』 『琉歌』 『琉球説話文学―神話・伝説・方言説話』 『評論』 『琉球和文学―和歌・擬古文物語』 『随筆』 『琉球漢詩文』 『資料編―文学史年表・方言の音節仮名表記・琉歌マップ』
という8章と資料編からなる。

この内容をみてもわかるように、方言から歌謡、漢詩まで盛りだくさん。この本一冊で、琉球の文学が概観できるといっても過言ではない。

また、本書は、前述したように、高校生のテキストとして編集されており、高校生レベルで理解できるように編集されているので、これから琉球の文学を知りたい、あるいは学びたいという人には最適であろう。

学校教材用テキストであれば、入手するのは難しいと思われがちだが、そこは県産本の身近なところ。書店でも販売されているので、入手しやすいのも嬉しい。

しかし、欠点をいえば、テキストとして編集されている関係上、硬い編集となっていることが気になるところ。読みやすいのだが、まるで学校の教室に迷い込んだ気持ちになってしまうことになる可能性もある。

また、『執心鐘入』は全文が掲載されているので問題はないが、他のジャンルは、いいとこどりというか、傑作を集めて編集しているだけに、これでもかというほど、良質の作品が押し寄せてくる。よいことに間違いはないのだが、逆に辟易してしまう読者がいるかもしれない。

そんなことを考えてしまったりするのだが、琉球文学のレベルの高さを知る上で、またとない書であるといえよう。

文学という言葉に、抵抗を感じてしまう方に、手に取ってほしい一冊でもある。

姉妹編で、『沖縄の文学 近現代編』も刊行されているが、それは別稿で評していくことにする。

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