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『事典』の名にふさわしい重厚な書といえる。沖縄の空手界は、非常に大きな財産を手にしたといえよう。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2013.12 ]

2008年7月発行
高宮城繁・新里勝彦・ 仲本政博 編著
柏書房 刊
B5判/752ページ
15,000円(税抜)
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沖縄空手古武道事典

高宮城繁・新里勝彦・仲本政博 編著

沖縄といえば空手、空手といえば沖縄。

いまや空手は、沖縄を代表するコンテンツとなっている。空手道大会が開催される際は、国際通りなど、海外からの空手マンであふれかえるほどである。

テレビなどで見る、空手を稽古する海外の方の表情は、緊張しながらも、本場沖縄で指導される喜びが体全体から満ち溢れているように思う。

「沖縄伝統空手道振興会」のホームページをみると、

今や、平和民族の武術や武器は、世界の愛好家によって、ますます発展し続けている現状である。今日空手古武道の愛好家は四千万人といわれている。(おそらく、我が国の世界への文化進出にかけては、沖縄空手古武道がナンバーワンであるといえよう。)

という文言がある。まさしく沖縄から世界に羽ばたいた代表が空手なのだということが実感できる言葉である。

私たち沖縄県民が世界に誇るべき文化、それが沖縄の空手なのだと思う。

しかし、いざ、空手の歴史や型・精神・各流派など調べようと思ったとしても、きちんと記されている文献を探すのに苦労する状態であり、ましてや、流派による違いや空手の先人たちに関しては、大まかなことしか調べることはできなかった。

それが、本書の発刊によって大きく変わることは間違いない。

本書は、さまざまな疑問に親切丁寧に教えてくれるだけでなく、詳細な歴史、空手や古武道の定義にはじまり、現代的意義や顕彰碑の存在、技法・型のみならず、思想の系譜までを綴っている。それこそ、『事典』の名にふさわしい重厚な書といえる。

改めて沖縄の空手・古武道の世界が、多くの先人たちによって体系化されたものであり、保存・継承には多くの方々の尽力があったことを知らされる。

沖縄の空手界は、2005年、沖縄県議会による10月25日「空手の日」決議、2008年2月の四団体大同団結による「沖縄伝統空手道振興会」の結成に次いで、非常に大きな財産を手にしたといえよう。

ただ、事典の限界ともいえるが、一度出版してしまうと、その後の追加や加除訂正が難しい点が惜しまれるところである。

また、世界へ向けての空手道であると考えるならば、英語訳や仏語訳、中国語訳、中東語訳などの訳本が必要とされるであろうし、電子化などによる世界への発信なども要望されるところであろう。

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