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舞踊の世界が紙面の上から立ち上ってくる、そんな感覚にさせてくれるのだ。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2013.12 ]

2001年3月発行
勝連繁雄 著
ゆい出版 刊
四六判/329ページ
2,000円(税抜)

琉球舞踊の世界 ~私の鑑賞法~

勝連繁雄 著

沖縄の文化を代表されるものといえば、おそらく、イの一番に挙げられるものが「琉球舞踊」であると思う。結婚式や祝いの座、余興や学校行事まで、幅広くウチナーンチュの生活の中に浸透し、裾野を広げているといっても過言ではないように思う。

実際、琉球舞踊はいいものである。古典舞踊の優美でしっとりとした情感や、人間の情念さを感じさせられる踊り、きりっとした男踊りの勇壮さ。雑踊の華やかさや庶民性。創作者の心情が伝わってくるような個性的な創作舞踊の数々。

琉球舞踊の魅力に取りつかれた者は、誰しも、その魅力について語らずにはいられなくなる。かくいう私もそうである。

しかし、裾野は広がってきているとはいっても、年間何回も琉球舞踊を鑑賞するという人は、まだ限られているように思う。琉球舞踊について知りたいけど、どのような手段で調べたらよいのかわからない。

そのような方にお勧めなのが本書。

本書には沖縄に住む者なら誰もが知っているであろう「かぎやで風」から、創作舞踊の名作「小浜節」まで、素晴らしい琉球舞踊五十五の作品が紹介されている。内容も歌詞はもちろんのこと、訳文や長年芸能に携わってきた著者ならではの鑑賞法も掲載されているところがうれしいかぎりである。

また写真も随所に効果的に散りばめられているが、古今東西・流派・男女にこだわることなく、たくさんの舞踊家が登場している。その写真を見ただけでも、沖縄の舞踊界の華麗ともいえる人材の多さに改めて琉球芸能界の多彩さを感じるのは私だけではないだろう。

しかし、著者の真骨頂は鑑賞法だけにあるのではなく、『踊り手の心に歌三線の音があるとき魅力的な踊りが生まれる』や、『肌かなさ肝かなさの世界、いわば心の中に存在する世界が雑踊であり、生身の人間そのものではなく、昇華され、純化された世界で、心の中に存在する非庶民的感覚、自己内規の行為が古典舞踊である』『古典舞踊は美しいが、それだけでなく、志の高さから生まれてくる』といった言葉や、創作舞踊や舞踊の世界に対する思いを吐露した、最終章の文章に集約されているように思う。
真摯に琉球芸能と向き合う著者の姿勢が、この本の中にはある。

本書は舞踊が好きな方は自分が好きな踊りを反芻しながら、初めての方でも手引き書として読むのに最適である。舞踊の世界が紙面の上から立ち上ってくる、そんな感覚にさせてくれるのだ。

この本を手に取った方は著者の世界に惹きこまれ、そして、いつしか魅惑的な琉球舞踊の世界にどっぷりとつかってしまうであろう。

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