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島には高校がない。その環境が続く限り、同じ状況は続いていくのだろうか。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2014.01 ]

2013年3月発行
沖縄タイムス南部総局 編
沖縄タイムス社 刊
A5判/349ページ
1,905円(税抜)
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十五の春 沖縄離島からの高校進学

沖縄タイムス南部総局 編

高校生のころ、離島から来たクラスメートがいた。明るく元気な奴だったが、食事や生活リズムの面で、大変だということをいっていたことを覚えている。

両親や祖母のいる家庭で、ノホホンと暮らしていた私にとって、高校生での一人暮らしがどのようなものか、考えることもなかった。頭の中では理解できるが、那覇で生まれ育ち、当然のごとく那覇市内の高校へ進学した身とすれば、想像もつかなかった。

もし高校生のときに一人暮らしをしていたなら、生活が不規則になると同時に生来の怠け癖がでて、確実に退学をしていただろうと思う。

逆に、子どもの親となった今、中学を卒業した時点で、子どもと離れて暮らさなければならないなんて、考えられないことでもある。
どんなにか辛いことだろう。

高校のない島。

高校へ進学するためには、生まれ育った島を離れなければならない。
十代の子共たちにとって、酷な事実に違いない。親にとっては断腸の思いだろう。しかし、それは、まぎれもない事実。

あきらめるのではなく、事実を事実としてとらえ、正面から向き合わなくてはならない。でも、強い人間ばかりではない。挫折する子どももいるだろう。

本書は、そのような高校のない島から島立ちをしていく子どもや家族、本島で現役生活を送る高校生、その家族を描いている。

そこには、それぞれの生き方がある。十五になり、中学を卒業したら、島を出ていかなくてはならないということ以外、何一つとして同じ内容はない。
それぞれが、それぞれの人生を歩んでいる。

巣立ちの前に行われる親子相撲・腕相撲。仕送りのために、昼夜問わず働く父親。
不安を抱えながらも、前向きに新しい生活に思いを馳せる中学生。
新生活に備えて料理を習う子と教える母。

進学に際する経済的な負担。 沖縄島で暮らす高校生や、見守る家族。島の生活との違いに苦悩する高校生。行政の取り組み。

さまざまな人生が描かれている。

かつて高校生であった自分、子を持つ親としての自分。
本書は、いろいろな視点で、十五からの人生を読ませてくれる。思わず涙が出ることもあった。

新聞に掲載された記事をまとめた書であるがゆえに、執筆を担当した記者たちは、感情をなるたけ抑えて書いている。しかし、そこには子の不安や親の哀しみなど、感情的なものが根底を流れている。どこにぶつけていいのかわからないような感情がある。

淡々と、ありのままを描いているだけに、心に響いてくる。

島には高校がない。
その環境が続く限り、同じ状況は続いていくのだろうか。
本書には、多くの取り組みがされていることも紹介されている。
改善されることを願うばかりだ。

十五の春は楽しくも哀しい。

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