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机上だけで読む本ではなく、手に持って、実際の工芸現場を見て歩きたい本でもある。

[ 新垣夕希(書評ライター養成講座 受講生) / 2014.02 ]

2000年10月発行
沖縄文化社 編・刊
B6判/98ページ
951円(税抜)
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沖縄の伝統工芸

沖縄文化社 編

「あなたの住んでいる地域の伝統文化を5つあげてください」と問われて、すぐに答えられるという人は、そう多くはないだろう。

近年、沖縄の都会化が進み、特に若い人たちは自分の住んでいる沖縄のことをよく知らないという人も多いのではないだろうか。

かくいう私も、地元である沖縄の伝統文化について、ほとんど何も知らない。
私がそのことに改めて気づかされたのは、30歳を過ぎた頃だった。

県外から観光旅行で沖縄を訪れた友人から、沖縄の伝統工芸について尋ねられて、何も答えられなかったのだ。非常に恥ずかしい思いをした。しかも、友人は地元民である私より何倍も知識が豊富であった。ガイドブックや沖縄関連書等で沖縄の伝統文化について幅広い知識を持っていたのだ。

そんな経験があり、私は沖縄の伝統文化について、他県の人に説明ができるくらいの知識は得ておきたい、と痛切に感じるようになっていた。

そんな時に、ふと出会ったのが本書である。

内容は、「壺屋焼」「琉球漆器」「染物・紅型」「沖縄の織物」の4章と、統計資料や各種組合等について書かれた資料編からなる。

沖縄にはたくさんの伝統工芸があるが、その中でも代表的な4つが取り上げられている。

三百年の歴史をもつ「壺屋焼」の章では、壺屋焼の歴史から、材料や技法について、写真付きでわかりやすく説明している。難しい専門用語はほとんど使われていないので、焼物についての知識がゼロでも、ストレスなく一気に読み進めることができる。

さらに巻末には、伝統工芸品の見学施設の一覧があるので、実物を見に行くにはとても便利な資料となっている。その意味で、机上だけで読む本ではなく、手に持って、実際の工芸現場を見て歩きたい本でもある。

本書片手に、那覇市壺屋の「やちむん通り」へ赴き、壺屋焼の専門店や工場をのぞいてみたり、県指定文化財となっている「南の釜」「東の釜」を見学したりしても良いだろう。まさしく、生きている工芸を味わうことのできる書といえる。

基本的なことがやさしくまとめられているので、沖縄の伝統工芸を専門的に勉強したい人には物足りないかもしれないが、常識や教養として伝統工芸を知っておきたい人には、おすすめの一冊である。

※この書評は、「平成25年度 書評ライター養成講座」の課題として受講生から提出された原稿を、講師の添削・指導のもと、加筆・修正して掲載したものです。
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