Home > 沖縄本をさがす >チルグヮーのむんならーし

理屈ではない、実生活の中から生み出されてきた智恵の結晶ともいえる内容だ。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2014.06 ]

2014年4月発行
喜納千鶴子 著
沖縄タイムス社 刊
聞き取り・編集:玉那覇展江
イラスト:福島律子
装丁:アイデアにんべん
A5判/185ページ
1,000円(税抜)
出版社のホームページへ

チルグヮーのむんならーし
母から習った教えと私が残したい言葉

喜納千鶴子 著

小さい頃、おばあの話を聞くのが大好きだった。昔のことを聴くと、即座に「んかしぇーよー」から始まるおばあの昔ばなしを聴くのが大好きだった。

おばあっ子だった私にとって、おばあは、心の中にある故郷みたいな存在だった。
経験を積んだ人は美しい。生き方に筋の通った人も美しい。

本書は、本部町で生まれ育った喜納千鶴子さんが語った言葉を文章にまとめたもの。

本や教科書などから学んだものではない、先人たちから受け継いできた庶民の生の言葉の連なりだ。
その意味で、飾りのない言葉は美しい。

そこには衒(てら)いや外連(けれん)など一切見られない。まさしく、理屈ではない、実生活の中から生み出されてきた智恵の結晶ともいえる内容だ。

また、喜納さんの言葉を記録し、文章化した玉那覇展江さん。喜納さんへの尊敬の念を、文章の端々から感じることができる。
お二人には(奥付に書かれているように)運命の出会いといえるものがあっただろうことを、本書から受け取ることができる。

本書の内容は、

「あなたに」
「若い人たちへ」
「独身の人たちへ」
「落ち込んだときに」
「人としての心得」
「親と子」
「兄弟」
「忍耐」
「行動する前に」
「言葉の大切さ」
「あやかり言葉」
「感謝」
「人間つきあい」
「人生とは」

と続き、

「喜納千鶴子さんができるまで」
「これまでの人生の歩み」

で結ばれている。

多岐にわたる内容となっているが、喜納さんが語りかけるような文章となっているので、本当に、言葉の一つひとつが心に染み入ってくる。

標題の「むんならーし」とは、辞典をひくと「しつけ」と載っているが、本書では、「母からの教え」となっている。
上からの視線でしつけたり物を教え込んだりするのではなく、同じ視線で、優しく柔らかいことばで教えてくれる内容でもある。

喜納さんが、昼下がりの緑陰で、優しい風を浴びながら語り掛けてくれるような心持にさせてもくれる。

さらには、「喜納千鶴子さんができるまで」「これまでの人生の歩み」で、喜納さんの歩んできた人生と、人生哲学、そして前向きに生きる人生訓を語ってくれる。
90歳を過ぎても、現役で生き、多くの人に影響を与えてくれる喜納さんの姿に感嘆する人は多いことだろう。

本書は、このような文章で簡単に評することはできない。
読んだ方々が、どのように思うかが大事なのだろうと思う。

若年層から年配の方までもが、読みやすいレイアウトの工夫がされている本書。
核家族が進む現代だからこそ、輝きが増してくる書といえよう。

このページの先頭に戻る