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沖縄のおじぃとおばぁなのに、なぜか若者言葉を使うというアンバランスな感じも魅力の一つだ。

[ 富川晶世(「書評ライター養成講座」受講生) / 2015.02 ]

2014年04月発行
大城さとし 著
沖縄タイムス社 刊
新書判/165ページ
600円(税抜)
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おばぁタイムス

大城さとし 著

2014年5月某日。ダーヴァ連載開始時からの『おばぁタイムス』ファンである私は、大型書店で著者による出版記念トーク&サイン会が開催されると知り足を運んだ。トークイベントが終わり、サイン会の整理券を貰い損ねた私は、いつ回ってくるかも分からない順番を待っていた。とその時、60代と思しき一人のおばさまが私に声をかけてきたのである。

「大城さとしって有名なの?『おばぁタイムス』って面白いの??」と。

突然の質問に私は、「大城さとしさんは沖縄タイムスの4コマ漫画を描いている人で、『おばぁタイムス』は面白いですよ」という、ごくごく普通に答えることしかできなかった。

2時間ほど待った後、イラスト付きのサインを貰い握手までしてもらった私は、大満足で家路に着いたのだが、心の隅にモヤモヤが。モヤモヤの原因は何なのか。そう、原因はあのおばさまに『おばぁタイムス』の魅力を十分に伝えられなかったことに違いない。そこであらためて、『おばぁタイムス』の魅力とは何か、考えてみた。

『おばぁタイムス』は、2005年に沖縄タイムスの「ダーヴァ」面で連載を開始し、2013年1月より社会面へと移った四コマ漫画である。80歳のちょっと型破りなおばぁと、そのおばぁへの愛に溢れる85歳のおじぃの生活を中心に描かれている。

本書に掲載されているのは、ダーヴァ連載時の作品150本である。現在の漫画に見慣れてしまっていると、若干絵のタッチが違うと感じるかもしれないが、それはそれで面白い。沖縄のおじぃとおばぁなのに、なぜか若者言葉を使うというアンバランスな感じも魅力の一つだ。四コマ漫画なのですぐ読めるのも良いが、随所に散りばめられている「クスッ」と笑える小ネタ(作中で読んでいる新聞に書かれたテキトーな事など)を探してみるのも面白い。こう書くと単なるほのぼの系漫画と思われるかもしれないが、ほのぼのの中にも時々鋭い時事ネタなどを入れてくるので侮れない。

ちなみに、本書には著者の解説(いいわけ)とキャラクター紹介が収録されている(キャラクター紹介を見て気付いたが、おばぁタイムス人気キャラクター投票で1位に輝いた「はーや先輩」が本書では出てこない)。「沖縄タイムスで毎日読めるから単行本はいいや」と思っている方も、ぜひ手にとって著者のいいわけを読んでみて欲しい。製作の裏側を垣間見ることができる。

ここまで書いていた2月2日に、第1回沖縄書店大賞が発表され、見事『おばぁタイムス』が郷土書部門の大賞に輝いた。やっぱりみんな『おばぁタイムス』が大好きなのである。

今ならおばさまにこう答えられる。
『おばぁタイムス』は沖縄の書店員も認める面白さで、その著者は沖縄の出版界をますます盛り上げていってくれると思いますよ!!」と。

この魅力が書店で声をかけてくれあのおばさまにも伝われば良いのだが…。
※この書評は、「平成26年度 書評ライター養成講座」の課題として受講生から提出された原稿を、講師の添削・指導のもと、加筆・修正して掲載したものです。
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