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タイトルを見ただけで、私が見ているけれども見えていなかった与那国の姿が記されているように直観した。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2015.06 ]

2015年02月発行
米城惠 著
南山舎 刊
B6判 / 292ページ
1,900円(税抜)
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よみがえるドゥナン 写真が語る与那国の歴史

米城惠 著

与那国へは、仕事で何回か行ったことがある。 住んでいる那覇とは全く異なる風景が広がっていた。 島のどこにいても、潮の香りを感じ、むせ返るほどの存在感を示す深い緑の山々に圧倒された。 小さいけれども、包み込むような優しさと、近寄るものをはねつけるような厳しさを感じた。 いろいろなことを考えながら、仕事が終わったあと、宿のベランダや、海べり、学校の校庭がみえる場所などで、ビールを飲むのが心安らぐ時間だった。 膝の上に置いた本の重さを感じながら、西の海へ落ちていく落陽を見る。ここは那覇から遠く離れた与那国なのだと、実感することもあった。

結局、安易に与那国島での時間を過ごしてしまったような気がしてならなかった。 何回与那国島を訪れても、与那国を理解することは難しいのかなとも考えていた。 そんなことを考えていたことを思い出させる本に出会った。
『よみがえるドゥナン』。
タイトルを見ただけで、私が見ているけれども見えていなかった与那国の姿が記されているように直観した。

本書は、古琉球から明治・大正、昭和まで、与那国の五百年余の時代を駆け抜けていく。 あっという間に古琉球時代の与那国があらわれ、そこから明治・大正の与那国となり、そして戦前・戦中・戦後の与那国が、歴史というベールの向こうからゆっくりと姿を現してくる。一枚の写真が出す迫力と、緻密な取材から紡ぎだされる文章。 そこからは、昔も今も変わらない与那国であり、ゆっくりとではあるが、変容する与那国でもあるのだ。
本書は、フルスピードで昭和の時代まで一話ごとに一枚の写真を配し、そこから話が始まっていく。 何の衒いのない文章で、淡々と書いているのだが、米城さんが描く世界に惹きこまれていくのだ。 まるで五百年前の「さがい・いそば」や明治の笹森儀助、鳥居龍三が目の前に現れてくるようだし、与那国の古今の庶民が生き生きと描かれていて、思わず語り掛けてみたくなるほど。

しかし、それは与那国の断片であり、私たちが見ることのできないベールの向こうの与那国の存在を知らせてくれるものでもあるように思う。 風景があり、庶民の生活があり、与那国の人々の表情がある。旅人の感傷など、何の力にもならないことも教えてくれる。 ありのままの与那国の姿があるだけだ。 しかし、本書を手にして与那国に渡ったら、これまでとは違う与那国を感じることができるかもしれない。 じっくり味わってみたいと思わせる好著である。

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