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歴史の面白さって、こんなところにもあるのかもしれない。歴史って、難しいものではないのだ。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2014.05 ]

2007年1月発行
新城俊昭 著
沖縄時事出版 刊
B5判/232ページ
1429円(税抜)
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親子で学ぶ沖縄人の生き方 
琉球・沖縄 歴史人物伝

新城俊昭 著

琉球・沖縄の歴史に思いを馳せ、それぞれの時代の本をひもとく。
紙面から立ちのぼってくる時代特有の匂いや風景などを思い浮かべながら、読むのは楽しい。

自らが主人公になったり、出来事を見守る第三者となったりして読み進めることも、本読みの醍醐味だ。

また、驚かされることも多い。特に、教科書で学んできた事柄とは異なる事象や、教科書には載らないエピソードなどを読むと「ふ~ん、そうだったのかぁ。知らなかったなぁ」なんてことを思い、ワクワクして、心が躍ってくる。

歴史の面白さって、こんなところにもあるのかもしれない。

歴史って、難しいものではないのだ。

そこで、本書。 琉球・沖縄の歴史を創ってきた人物たちの中から、琉球最初の国王とされる舜天を初めに、ウルトラマンの作者として著名な金城哲夫までの五十名を紹介している。
面白いセレクトである。

もちろん、掲載されている人物の全てについて、事績や具体的な内容を知っている人は少ないだろう。しかし、読み進めていくうち、それぞれに、琉球・沖縄史の中で貴重な存在であったことがわかるし、重要だからこそ取り上げられているということがわかってくるのだ。

また、それぞれの文章も平易で読みやすく、漢字にもルビが丁寧に振られているので抵抗なく入っていける内容となっている。 歴史上の人物たちが、本書の中で生き生きと躍動している感じさえするほどだ。
まさしくサブタイトルにあるように、親子で学ぶにふさわしい内容といえる。

そして、本書の特長といえば、伝説の部分と、事実であることの記述がしっかりしていることだ。

例えば、舜天・英祖・察度の場合は、ほとんどが伝説に彩られた人物であるということと、現在の学問的な評価をきちんと書き分けている。 恩納なべや吉屋つるにしても同様。
他にも、オヤケアカハチなど、逆賊か英雄かと評価が分かれる人物などに関しては、両方の説を解説している。きわめて良心的な執筆姿勢だといえるだろう。

著者の新城氏が書いているように、先人たちと正面から向き合い、耳を傾けた結果なのだと思う。だからこそ、信頼に値する内容であると断言できる。

人物や時代に沿ったコラムも楽しいし、知的好奇心を満足させてくれる。至れり尽くせりの内容であるといってもいいだろう。

歴史を正統に評価し、しっかりと学んでいくべきなのが歴史。しかし、眉根を寄せながら学ぶ必要はない。肩の力を抜いて、ゆったりと落ち着きながら、楽しみながら学ぶこともいいだろう。私たちは、学者でも研究者でもないのだから。

その意味でも、本書は、最適の歴史テキストでもあるのだ。

そのうえで、私たちは、沖縄の歴史上の人物たちに学ばなければならないのかもしれない。

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