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そうなのだ、発達障がいという「個性」には、理解することが一番大切なのだ。

[ 宮城一春(編集者・ライター) / 2014.06 ]

2014年4月発行
平岡禎之 著
光文社 刊
四六判/191ページ
1,500円(税抜)
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うちの火星人―5人全員発達障がいの家族を守るための“取扱説明書”

平岡禎之 著

例えば食堂で、騒ぐ子どもをにらみつけたことはないだろうか。
そばにいる親に舌打ちをしたことがないだろうか。

例えば集団の和を乱すような行動をする人に、「何してるんだよ」と不満を漏らしたことはないだろうか。

多分、人の迷惑も顧みない迷惑な人たちだと、少し眉をひそめて終わるだけだと思う。

しかし、その行為が発達障がいという特別な個性(本書より)だとわかったら、どうだろう。

迷惑をかけていると思われている人が、突然のことにパニックを起こして、そのような行為をしているのだと、理解できたらどうだろう。

きっと、対応が変わってくるに違いない。もちろん、単に自分本位であったり、他人や周囲のことを全く考えたりしていない人たちもいることだろう。

だからこそ、発達障がいを持つ人たちの生きにくさや理解してもらえない苦しみがあるのだ。

そうなのだ、発達障がいという「個性」には、理解することが一番大切なことなのだ。

本書は、そのような発達障がいという特別な個性を持つ家族に囲まれた著者が著した取り扱い説明書だ。

なにせ、6名家族の中で、5名が発達障がいを持っているのだ。
理解できないことはたくさんあっただろうし、途方に暮れたことは数多くあっただろう。めんどくさいと思うこともたくさんあったに違いない。

そんな中、持ち前の優しさと、思いやり、家族に対する愛情でクリアする著者・平岡さんの変わらない姿勢に感嘆してしまうし、自分自身の特性に戸惑い、苛立ちながらも、前を向いて歩もうとする家族の姿勢に、思わず拍手を送りたくなる。

そう思わせる本だ。

発達障がいだと理解するまでは、本当に苦しかったと思うが、特別な個性を持つと理解した時点での、対処の仕方が抜群である。

詳しくは本書を読んでもらいたいのだが、家族一人ひとりの個性に合わせて、動物のキャラクターで表現していく。それどころか、火星人と言い切ってしまう潔さに、驚きつつも読み進めるうちに共感していく。

またそれによって、一人ひとりが自分の個性を理解して、社会に対応していく(もちろん、無理して対応することはないとは思うのだが、そうしないと理解されないことに苦しむのは自分自身であろうことも理解できる)。

逆に考えると、私たち自身、家族ときちんと向き合い、個性を理解しているのだろうかとも考えてしまう。

いや、きっと理解していないだろうなぁ。

本書は、発達障がいに対する啓蒙書となっているとともに、家族への愛情たっぷりのエッセイにもなっているし、平岡家を通しての素晴らしい育児書ともなっている。一冊で何度も楽しめる本だ。

失敗や苦労をそこはかとなく、くるむユーモアも読む側を飽きさせない。

肩ひじはらず、発達障がいのことが理解でき、現在社会において家族とは何かを、自然と知らせてくれる。

現在でも沖縄タイムス紙上にて連載が続く「うちの火星人」。続編を期待したい書である。

次の発刊が楽しみだ。

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