著者が友人に語り聞かせるように、創業希望者や経営に苦しんでいる観光業者に語っている。
[ 上原英樹(「書評ライター養成講座」受講生) / 2014.09 ]
2014年04月発行
渡口昇 著
幻冬舎メディアコンサルティング 刊
B6判/259ページ
1,200円(税抜)
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必ず儲かる 沖縄観光ビジネス
渡口昇 著
タイトルの「必ず儲かる」に惹かれて手に取った。帯には「沖縄ダイビングショップ年間集客ナンバー1」とある。これはぜひ買って読みたいとレジに向かった。
本書は、著者がダイビングショップ経営で実践し、見出した「必ず儲かる」ノウハウを「ひとつ残らず公開」した内容である。とはいえ、いわゆるノウハウ本ではない。著者が友人に語り聞かせるように、創業希望者や経営に苦しんでいる観光業者に語っている。勢いよく喋っているという表現が適切だろうか。
著者は沖縄観光ビジネスで成功するためには、なによりも「集客」が重要だと繰り返し語っている。そしてその集客ノウハウを分解し、説明している。著者は旅行雑誌の広告が集客に最も効果的であるという。旅行雑誌の広告で集客を獲得するためには、何をどのように作りこむべきか。例えば、広告を出すまでの年間スケジュールであり、集客の肝となる写真の意味づけや撮り方など、そのノウハウを、十数ページをかけて説明している。
商品開発の分野では、まず自分で体験し、どこに気をつけ、何を見ておくべきか。事細かに解説している。非常に分かりやすい内容である。本当に使えるノウハウが満載の書だ。
さらに「沖縄に移住し起業した七名の体験談」で、『革ぞうり』や革細工ショップのオーナーが自身の創業について語っている文がある。読み応えがあるし、沖縄の創業希望者、経営者に与えるヒントは多いだろう。
ところで、何度か読み返すと、ある一文や言葉が力を持っていることに気が付く。例えば、価格には先行投資の返済額を含めること、一日に三百件もの電話を受けて学ぶ覚悟など、それらはさらりと記されている。著者の経験が凝縮された言葉に気をつけて読んでほしい。
沖縄で観光客を主な客層としている業種の経営者は本書を読み、「これはいい!」と思えばマネから始めてほしい。決してダイビングショップのためだけの本ではない。マリンスポーツ、ホテルや貸別荘、観光施設、土産物店、飲食店、エステやスパ、挙げるとキリがないが、つまり県外からの観光客に来店してほしい、買ってほしいと思う商売ならば、本書は参考になる。